極東書店ニュース700号到達を記念し、明治大学名誉教授横井勝彦先生から祝辞をいただきました。
研究生活40年と「極東書店ニュース」
今年「極東書店ニュース」は700号に到達した。洋書新刊情報の提供を通した広範な学術分野への多大貢献に敬意を表するとともに、創刊以来70年にわたって編集に携わってこられた歴代担当者の方々のご尽力に、心より御礼を申し上げたい。
私自身もイギリス経済史の分野で研究を開始してすでに40年、洋書の新刊情報に関しては「極東書店ニュース」を一番頼りにしてきた。利用者のニーズは多様で、新刊情報は増加の一途だが、「極東書店ニュースONLINE」にも、精選された情報と使い勝手の良い機能が追加されていくことを期待したい。
さて、思うに、人生観が一変する程の「一冊の本との出会い」など、めったにあるものではない。しかし、研究者が新たなテーマを発見する契機となるような「一冊の本との出会い」は、生涯に何回かあるように思う。研究テーマに即した「一冊の本との出会い」ではなく、その逆の関係なので多くはない。しかし、これは重要な出会いである。そうした機会を提供してくれたのは「極東書店ニュース」であり、同社営業担当者との研究室での度々の雑談であった。
情報化と国際化によって、研究環境は大きく変わった。ネット時代以前には、国会図書館で許容範囲まで洋書をコピーしたり、飯田橋のブリティッシュ・カウンシルに依頼してイギリスから書籍や論文を取り寄せたり、そして念願の留学の折には、公文書館で筆写とコピーに明け暮れ、田舎町の古本屋で意外な発見に興奮したりと、文献や資料の蒐集にはそれなりにエネルギーを割いてきた。
ところが現在では、オンライン上で世界中の古書店を横断検索して、探求本を短期間で取り寄せることも可能となった。大学図書館や文書館のデータベース化も急速に充実してきており、研究者の生産性もかなりの向上が期待できるようになった。問題は、研究時間と研究費である。
一般に大学教員の仕事は研究と教育と校務の3分野に及び、その比重の置き方には個人差があるが、私の場合は「校務のエフォート率」が平均値を大きく超えていた。そんな中、定期的に届く「極東書店ニュース」と同社営業担当の方との研究談義には大いに助けられた。その後に届く「見計らい本」、そして「積ん読」と「つまみ読み」。多忙な中でも「一冊の本との出会い」が生まれる環境がそこにはあった。「極東書店ニュースONLINE」によって、そうした環境の新たな地平が拓かれることを期待している。
横井勝彦(明治大学名誉教授)