極東書店ニュース700号到達を記念し、京都大学文学部教授金澤周作先生から祝辞をいただきました。
極東書店ニュース700号記念号に寄せて
金澤周作(京都大学文学部)
1990年代半ば、私は学部生の後半期で、先輩方の主催する読書会に参加したり、助手さんに学習上のアドバイスをもらいにいったりと、大学院生が集う「研究室」に顔を出すようになった。おぼろげな記憶では、このころすでに極東書店ニュース(以下ニュースと略記)は必ず共用の大机に置いてあった。学部生の私には敷居の高いカタログであったが、大学院生が眺めてメモなどしている様は、実に格好がよかった(極東書店さんからたくさん本を買いすぎて支払いが滞っている方がいるとも聞いたが、その人のことも極東さんのことも、豪気だなと感じていた)。
自分が大学院に進学すると、その重要性をはっきり実感するようになった。まだ大学のOPACが白黒で、カード検索も現役、「パソコン通信」がようやく普及しつつあるといった90年代半ば~後半にあって、情報の乏しい海外の新刊書の情報はありがたかった。私は極東書店さんと直接取引はなかったものの、ニュースの恩恵は多大であった。
大学院修了後、最初の就職先に勤めていた数年間、ニュースには触れる機会がなくなってしまった。インターネットでの書籍検索が容易になったので、自分の研究分野で必要な文献については、その方法で間に合うようになった、少なくともそんなふうに勘違いするようになったという面もある。
しかし、なんでも検索できるようになってもニュースはかけがえのない存在なのだということを、私は痛感することになった。2009年に京都大学に教員として戻ってくると、専修予算を用いた文学部図書館の蔵書のための選書という、これまでにない重い責任を担うことになったからである。専門外の、英語だけでなくフランス語とドイツ語などの書籍にもできるだけ網を広げようとしてきたが、これについてはニュースがなければ絶対に無理だった。最新号が届くと、予算の許す範囲で、重要だと思われる文献に〇をつけては注文してきた。
極東書店さんが定期的に丁寧に分類して教えてくれる新刊書の情報は、書店・図書館でのブラウジングに等しい価値があり、耳学問ならぬ目学問をさせてもらってきた。営業を長く勤められた前営業担当の方とのなにげない会話も面白かった(現在は橋本さん)。皆さんのこれまでのご尽力に、心から感謝したい。オンライン化した今も、私にはなくてはならない情報源である。