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American Art-Union, 1839-1851: The Rise of American Art Literacy.


アメリカ美術連合とアメリカ美術の成立

◆19世紀アメリカを代表する美術家後援団体に関する約50,000ページの文書群を収録

 19世紀のアメリカでは、ヨーロッパからの文化的独立を目指し、独自の文学や芸術を追求する動きが起こりました。作家や芸術家の周辺には、定期刊行物や批評家、後援者の集団が叢生し、文学や芸術の発展を側面から支えました。19世紀のアメリカで成立した多くの美術家愛好団体や後援団体の中でも、最大級の規模を誇ったのがアメリカ美術連合(American Art-Union)です。アメリカ的な美術の創生と国民の美術的素養の増進を目的として1838年にニューヨークで創設されたアメリカ美術連合は、富裕な実業家をメンバーとする理事会の下、富裕層中心の会員制団体として運営されました。貴族のいないアメリカでは、ヨーロッパで貴族が演じていたパトロンの役割を実業家が演じることになりました。

 アメリカ美術連合は、新生国家アメリカの理念と運命を芸術的に表現する画家を経済的に後援し、イギリスからの独立、西部開拓、米墨戦争での勝利など、アメリカの栄光の歴史を描いた美術作品のプロモーションに努めました。団体が積極的にプロモートした作品としては、エマニュエル・ロイツ(Emmanuel Leutze)の「デラウェア川を渡るワシントン(Washington Crossing the Delaware)」、ウィリアム・シドニー・マウント(William Sidney Mount)の「農民の昼休み(Farmers Nooning)」、ジョージ・カレブ・ビンガム(George Caleb Bingham)の「陽気なフラットボートの漕ぎ手たち(The Jolly Flatboatmen)」、リチャード・ケートン・ウッドヴィル(Richard Caton Woodville)の「メキシコからの戦争報道(War News from Mexico)」等が挙げられます。プロモーションの主要な手段に使われたのが原画の複製版画で、複製版画は会員に頒布されました。アメリカの国民的視覚芸術を実業家が後援するアメリカ美術連合の試みは、奴隷制への対応を巡る分断のために短命に終わりましたが、アメリカ固有の美術の成立に大きな貢献を行なったこと、アメリカ最大の美術市場の地位をニューヨークが確立したことなど、アメリカ美術史の中で持つ意味は小さくないにも関わらず、従来、アメリカ美術連合に対して正当な評価が下されることはありませんでした。

 本コレクションは、アメリカ美術連合の年次総会や理事会や購入委員会の議事録、作品台帳(作品名、画家名、購入されたか否か、等を記す)、美術連合に宛てられた書簡(その多くは画家や画家の代理人からの書簡)、美術連合が送った書簡、新聞記事の切抜き等、ニューヨーク歴史協会(New-York Historical Society)が所蔵する約50,000ページの文書群を収録することで、アメリカ美術連合の活動の実態を初めて明らかにするものです。アメリカ美術連合に歴史的な評価を与えるための資料集としても、19世紀アメリカ美術の動向を文化的、社会学的にアプローチする資料集としても、貴重なものです。

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