◆革命以前の君主制イラクにおける米国との友好期の技術協力
1930年代イラクが独立し、第二次大戦が終了すると、米国とイラクの関係が深まります。両者の関係は、米国のイラクに対する様々な支援という形態を取りましたが、その一環として米国からイラクに対する技術支援を目的とした使節団が派遣されました。
このイラクにおける米国使節団(U.S. Operations Mission in Iraq)については従来、1958年にクーデタが発生し共和制が成立したため、これまで正当な歴史的評価を与えられないか、ややもすれば、共和制以前の体制を温存したものとの否定的評価をすら与えられることがありました。しかし、本コレクションに収録された資料を精査すると、使節団が厳しい障害に直面したにも関わらず、相当の成果を上げた事実が浮かび上がってきます。米国のイラクに対する支援は、イラク政府に対する技術者の助言と協働、物品の提供、視察と職業訓練を目的とした米国及び第三国へのイラク人の派遣という三種類の形態で行なわれました。イラク国内での支援は農業の改善を主要な対象としたものの、予防医療、教育、行政の領域にも及びました。共和制以前の体制を温存した米国の政策の一環としての技術支援という評価を超えて、使節団の活動を学問的に検討することは、経済成長と政治的自由の関係の問題を再考する契機となるでしょう。
※本コレクションはマイクロフィルムRecords of U.S. Foreign Assistance Agencies, 1948-1961: U.S. Operations Mission in Iraq, 1950-1958をデジタル化したものです
Online