PIN104016
1943年、W.ラトリッジは、F.D.ローズヴェルトによってアメリカ最高裁判所判事に任命されました。本文書は、彼が最高裁判事を務めた前半期の資料で、第2次世界大戦期のアメリカ研究にとって格好のコレクションです。本文書は、1942年から45年にラトリッジによって書かれた意見草稿や、彼と他の裁判官たちによる最終意見、裁判官同士で交わされた文書を収め、1942年から45年までに上訴され、多くが不受理となった4500を超える訴訟に関する会議メモで構成されています。このメモは、最高裁に上訴された全ての訴訟についてラトリッジや彼のロー・クラークたちの慎重な審議の過程を示すものです。
　本コレクション所収のIn re Yamashitaは、第2次世界大戦関連の論争的な裁判の一つです。日本の陸軍大将であった山下奉文は、フィリピン方面の司令官でした。日本降伏後、彼は、フィリピンの民間人と戦争捕虜への残虐行為に関わった部隊の責任を問われ、軍事委員会によって有罪判決を受けました。この裁判はアメリカの最高裁に上訴されましたが、敵国将軍はアメリカ法廷における憲法上の権利を有しないという理由で、最高裁は上訴を認めませんでした。しかし、ラトリッジは、山下が、「法の適正な過程due process of law」の資格を保持するとして、最高裁の決定とは反対の見解を述べています。
　このほかにも、第1部に集められた重要裁判の資料は、以下のとおりです。Aguilar v. Standard Oil Co. (1942); Hirabayashi v. United States (1942); Marconi Wireless v. United States (1942); East-ern-Central Motor Carriers v. United States (1943); Kansas v. Missouri (1943); McLean Trucking Co. v. United States (1943); National Labor Relations Board v. Hearst Publications (1943); Smith v. Allwright (1943); Korematsu v. United States (1944); Railway Labor Act cases (1944); United States v. General Motors Co. (1944); Chickasaw Nation v. United States (1945); Davis v. United States (1945); General Elec. Co. v. Jewel Incandescent Lamp Co. (1945); May Department Stores v. National Labor Relations Board (1945); New York and Saratoga Spring v. United States (1945); Glass City Bank v. United States (1945)。