米国の最も古い私立探偵社であるピンカートン探偵社は、アラン・ピンカートンが1850年代に設立してから150年以上の歴史を持ち、最も悪名高い犯罪者の事件の捜査を担当しました。たとえば、ブッチ・キャシディ, サンダンス・キッド, ジェシー・ジェイムズ, Alfred Brady, ジョン・デリンジャーなどの名立たる犯罪者の捜査です。最初期の有名な契約の一つに、リンカンが鉄道弁護士を務めたイリノイ・セントラル鉄道会社の警備活動を挙げることができます。またリンカンの大統領就任後、ピンカートンは、大統領の身辺警護とともに連邦軍への情報提供のためにシークレットサービスを組織しました。それから南北戦争後には、彼の息子たち（ロバートとウィリアム）が、事業を拡大し、20世紀初頭までに、ピンカートン探偵社は数千人の従業員と多数の顧客を抱え、米国中に事務所を構える程に成長しました。このたびマイクロフィルム化された資料は、米国議会図書館に保管されていた資料で、1857から1999年までの探偵社の業務管理ファイルと、事件名がAからNで始まる事件を集めた貴重な刑事事件ファイルが中心です。
　まず業務管理ファイルは、探偵社の歴史を概観し、最も有名な事件の捜査や探偵社の実際の事業を記録している文書を収録します。この中には、先に挙げたブッチ・キャシディとサンダンス・キッドによって行われた銀行強盗や列車強盗、ならびにジェシー・ジェイムズや彼の兄、フランク・ジェイムズによって指揮されたギャング団に対するピンカートン探偵社の追跡の文書を収録します。探偵社の歴史上、最も重大な事件の一つは、リンカンが大統領就任のためワシントンに向かっていたときに、彼に対して画策された暗殺未遂事件でした。本記録によれば、1860年代半ばに、ピンカートンは、暗殺事件が取り沙汰されていたボルティモアを、リンカンが通過する際に、身辺警護を任せるよう強く勧めています。業務管理ファイルは暗殺計画やその阻止において果たしたピンカートンの役割に関する書簡、論説、小論、新聞切り抜きなどを収録します。概して、ピンカートン探偵社の業務管理ファイルは、米国における法執行の歴史や米国初の私立探偵社の業務実態、国の最も有名な刑事事件の調査などを研究する豊富な材料を提供します。
　次に、刑事事件ファイルは、刑事事件文書、探偵員個人からのレポート、犯罪者の顔写真、報奨金通知書、指名手配ポスターのみならず、事件終了後に、探偵社スタッフによって書かれた事件の数々の歴史資料からも構成されています。シリーズ１は、1870年から1958年まで（主に1880年から1930年まで）の事件の資料を収録しています。この中の最も有名なファイルは、ブッチ・キャシディやサンダンス・キッド（本名ハリー・ロングボー）、キッド・カーリー（本名ハーヴェイ・ローガン）、そしてワイルド・バンチ強盗団の追跡に関する資料です。これには、サウスダコタ、アイダホ、ネヴァダでのキャシディ一味による銀行強盗に関する資料や、モンタナ、ワイオミング、コロラドでの列車強盗事件の資料も存在します。他の事件ファイルの主だったものは、William Barrett、サム・バス & ジョエル・コリンズ、Charles Becker、Alfred Brady、Charles O. & William E. Brockway、William Burke、John Cannon、James Carrollらに率いられたギャング団の記事も収録しています。各犯人やギャング団のファイルの他、本シリーズは、アラバマ、ジョージア、イリノイ、ミシガン、ミズーリ、ペンシルヴェニア、ウィスコンシン、ヴァージニアで起こった犯罪ファイルも散見されます。次に、シリーズ2に含まれる悪名高い事件は、フランクとジェシーのジェイムズ兄弟によって率いられたJames-Younger強盗団、ジョン・デリンジャー、Patrick Flanagan gang、Eduard Guerin gangなどのギャング団の事件です。他にも、トロント、ニューヨーク、ニュージャージー、ルイジアナの強盗事件、銀行強盗事件や、興味深い事件としては、Seely Houkの殺人と"Black Hand"捜査、トマス・ゲインズバラの絵画の盗難、Hartford Accident & Indemnity Co.社の保険金詐欺事件が収録されています。最後に、シリーズ3の事件ファイルにはJoseph Killoran団の事件記事や、1861年の大統領就任時におけるリンカン暗殺計画を阻止したピンカートンの活躍、そして秘密結社「モリー・マクガイアズ」を瓦解させたピンカートン探偵社の努力などを伝える資料が豊富です。