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著者・編者 | Richthofen, Ferdinand Freiherr von, |
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ニュース番号 | <R24-20> |
8vo, xii, 745pp, contemporary half cloth binding with marbled board, spine in compartment, title lettered in gilt to spine, foxing
リヒトホーフェンが近代地形学の父と称される基となった『研究旅行者への手引き』(以下『手引き』)は、本来 1874 年に G・ノイマイヤー(G. Neumayer)の編集する『旅行時の科学的観察入門』15)
に地質学の項として執筆依頼され、その後出版社の要請で独立刊行されたものである。したがって、それはタイトルが示すように一般的な教科書として出版されたものではない。発行年はまさしく彼がベルリン大学に招聘された 1886 年であり、最初の依頼からかなり年月がたっている。これは学期休みの間に少しずつ書かれたことにもよる。したがって、『手引き』は、『中国』と平行して書き著されたことになるが、コルプ(A. Kolb)は主にライプチヒ大学在職時(1833 - 1886 年)に書かれたという 16)。『中国』の第 2 巻が刊行されてから、取り急ぎまとめられたようである。地質学の項で執筆依頼されたにもかかわらず、主に地形が取り上げられたのは、彼がいかに地形に関心を示すようになったのかをうかがわせる。『中国』の第 1・2 巻において出くわした地形の問題を『手引き』の中において彼は積極的に整理・再検討したかったように思われる。校正の段階に至っても彼は精力的に文献を収集し、注釈で内容を補うこともしている。それゆえに、『手引き』は、一般に考えられているよりも、彼自身の観察に基づいた地形論ははるかに少ない。その内容は以下のごとくである。
全 3 部からなる『手引き』の第 1 部は導入で、旅行準備から始まり野外における観察方法が主たる内容となっている。これは本来地質学や地理学の訓練を受けたものには不必要であり、リヒトホーフェン自身が述べているように、あくまでも商人や宣教師などのいわゆる素人向けに書かれたものである。しかしながら、第 2 部以降はかなり専門家を意識した内容となっており、『手引き』が、A・ペンクのテキスト 17)が現れるまで標準的な教科書として用いられたのもごく当然のことである。
(リヒトホーフェンの地形学 北野 善憲 立命館文學 = The journal of cultural sciences / 立命館大学人文学会 編 (617) 113p, 2010-06 より)