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著者・編者 | Dutrait-Crozon, Henri, |
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ニュース番号 | <R22-232> |
8vo, xlvi, 554pp, original soft bound, untrimmed edges
ドレフュス支持者は冤罪を主張し、再審を求めた。フランス語の「レヴィジオン(r?vision)」は、裁判のやり直し、「再審」を意味すると同時に、「修正」「見直し」も意味する。つまり「修正」とは、もとは事実の解明とこのユダヤ系軍人の正義を求めたドレフュス派の言葉だった。
のちにドレフュスへの嫌疑は晴れ、無罪が確定し名誉回復も行われた。しかし、言葉の本来の意味は反転して、歴史的な事実を歪曲する行為が「修正」と呼ばれるようになる。
というのも、ドレフュス派の政治評論家ジョゼフ・レーナックがまとめた全七巻の『ドレフュス事件史』(Hisoire de l'affaire Dreyfus一九〇一‐一一年)に対し、反ドレフュス派の右派政治団体として設立されたアクシオン・フランセーズのメンバー二人が、「アンリ・ドゥトレ=クロゾン」という偽名で『ジョゼフ・レーナックという歴史家-ドレフュス事件史修正版』(Joseph Reinach historien. r?vision de l'histoire de l'affaire Dreyfus 一九〇五年)を発表したからである。
この本は、アクシオン・フランセーズの代表、シャルル・モーラス(一八六八-一九五二)が序文を書き、六〇〇ページにわたるドレフュスの有罪を示す「事実」を細かな注を添えて示す体裁を取る政治的な偽書だ。
この「修正版」は、虚偽入り交ることが明らかとなった後も、反ドレフュス派の一種の「聖典」とされ続けた。フランスの歴史家ヴィダル=ナケは、これを歴史の否定という意味での歴史修正主義の「文学的起源」としている。
引用文献:武井彩佳『歴史修正主義』 20-21頁、中央公論社、2021年